三元豚(さんげんとん)とは
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三元豚(さんげんとん)とは、三つの品種を掛け合わせた一代雑種の豚だ。
具体的には、ランドレース種(メス)×大ヨークシャー種(オス)×デュロック種(オス)と言う風に交雑種を作る。
成長が早く、子豚をたくさん産むランドレース種(L)。
赤みと脂身のバランスが良い大ヨークシャー種(W)。
これらを交配させて生まれた交雑豚(LW)のメスに、肉質の良い米国原産のデュロック種(D)のオスを交配させる。
こうして作られたのが三元豚で、この掛け合わせを「LWD」と呼ぶ。
他にも、ランドレース(L)×デュロック(D)の交雑種(LD)に、中国原産の金華豚(K)を掛け合わせた「LDK」、バークシャー種(B)を掛け合わせた「LDB」等がある。
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食肉生産に交雑種を使う理由
鶏肉のブロイラーも交雑種だったが、大量生産の豚肉も交雑種だ。
交雑種を食肉として使うのには、いろんな事情がある。
たとえば「国産牛」というのは、乳牛と肉牛の交雑種(F1種)だ。
これは乳牛に乳を出させるために、乳牛の雌に産ませた子供の肉だ。
乳牛も子牛を産まないと乳を出さないので、種付けして子供を産ませるのだが、乳牛同士ではなく肉牛を種付けする。
そうすると子ウシは肉牛と乳牛のハーフで、乳牛よりも肉質が良い牛になる。
このハーフの牛の肉が、食肉(国産牛)として高く売れるのだ。
一方、鶏肉のブロイラーの場合は、肉付きの良い品種と、卵をたくさん産む品種を交配する。
というのも肉付きの良い品種は、産む卵の数が少ない。
逆にたくさん卵を産む品種は、肉付きがあまり良くない。
そのため、肉付きの良い品種のオスと、卵をたくさん産む品種のメスを掛け合わせて、肉付きの良い鶏をたくさん作るわけだ。
豚肉の場合も、身体の大きい大型の豚と、肉質の良い中型の豚を掛け合わせる。
ところが豚は肉質にバラツキがあるため、もう一度掛け合わせて、肉質を安定させるのだという。
生まれた子豚は、7ヶ月くらい肥育され、体重が100kgを超えると肉にされる。
黒豚、アグー豚、高座豚 銘柄豚の色々
大量生産される豚肉は、三元交雑によって作られる交雑種の豚肉だ。
一方、黒豚や高座豚、アグー豚などという「銘柄豚」は、単一品種の豚だ。
黒豚というと日本では鹿児島だが、現在の鹿児島の豚は、イギリス原産のバークシャー種だ。
バークシャー種は中型の豚だが、肉質が良く味も良いという。
鹿児島ではエサや飼育方法などを工夫して、「かごしま黒豚」として売り出している。
同じバークシャー種を、放牧で育てたのがスペインの「イベリコ豚」だ。
イベリコ豚は牧草と樫の実(ドングリ)で育てられ、イベリコ豚の生ハムは最高級とされている。
一方、イギリス原産の中ヨークシャー種を、神奈川県の高座郡で飼育したのが「高座豚(こうざぶた)」だ。
中ヨークシャー種は中型だが味は良く、かつては日本全国で飼育されていたが、現在はごく一部でしか生産されていない。
高座豚も、純粋な品種としてはすでに廃れており、現在神奈川県で生産されている高座豚は、イギリスから再度導入したヨークシャー種をベースに、ランドレース種や赤みが多いハンプシャー種を交雑させて生産されているようだ。
最後のアグー豚というのは、沖縄の在来種で、小型の品種だ。
アグー豚は頭数も少なく、あまりたくさん子供を産まないため、一時期は絶滅してしまった品種らしい。
そこでアグー豚の血を引く雑種同士を掛け合わせ、アグー豚の特徴を持つ豚を選り分けて、品種を復活させたらしい。
小型のアグー豚は肉にすると高価なので、ランドレース種などの大型種のメスと掛け合わせ、それをアグー豚として販売している。
要するに銘柄豚というのは、昔の中型の豚をベースとした品種って事だな。