穀物肥育と霜降り肉
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肉牛の育て方は、大きく分けて二種類ある。
それは「牧草肥育(グラスフェッド)」と「穀物肥育(グレインフェッド)」だ。
肉牛はまず、生後1年間は牧草で育てられる。
放牧で育て、大きな身体になる準備をする。
このまま牧草で育てて出荷するのが、牧草肥育というやり方だ。
牧草肥育で育てられた肉牛は、余分なエサを食べていないので、健康で脂肪が付きにくく、硬い赤身肉になりやすい。
主に牧草肥育で牛肉を生産しているのが、オーストラリアやニュージーランドだ。
一方、生後二年目から、トウモロコシなどの穀物の濃厚飼料(高炭水化物食)のエサで育てるのが穀物肥育と言う肥育方法だ。
濃厚飼料は高炭水化物食なので、太りやすく脂肪が付きやすくなる。
さらにビタミンAが欠如しがちになるため、美味くコントロールすると霜降りが増す。
そのため、霜降り肉を珍重する日本では、肉牛の出荷の時期に合わせて、ビタミンAが少ないエサに切り替える。
ただし、タイミングが早すぎると、牛が糖尿病になったり、失明したりする。
穀物肥育では、濃厚飼料という高炭水化物食をエサにしているため、血糖値が上がりやすく、糖尿病リスクが高まる。
糖尿病になると、血糖値が常に高いままになるので、そこでビタミンAが欠如すると、目の毛細血管が糖化されて失明する。
ヒドい場合は、牛が立てなくなったりするらしい。
品種改良によって霜降りができるなら良いけど、栄養失調で霜降りってのは、気持ち悪いな。
まあ、安い肉しか食べない私みたいな貧乏人には、あまり関係ない話かも知れないが。
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グラスフェッドビーフと成型肉・牛脂注入肉
オーストラリアやニュージーランドで生産されている牛肉は、赤身肉で硬い牛肉だ。
牧草肥育牛とか、グラスフェッド・ビーフと言う。
グラスが「草」で、フェッドが「肥育」だ。
出荷されるまでの殆どの期間、放牧で育てられているため、脂肪が付きにくく健康な筋肉が付く。
そのため、安くて質の良いヘルシーな赤身牛肉ができるのだが、硬くて、草臭い味の肉になるという。
もちろんグラスフェッドでも、出荷前に少し穀物を食べさせ、太らせたりすることもある。
しかし穀物飼育と比べれば、健康的で病気にかかりにくく、えさ代も殆どかからないので安い。
そのため日本では、輸入が解禁されてから、主に加工用としてオーストラリア産の牛肉を輸入しつづけている。
というのもグラスフェッドの硬い牛肉でも、ヒレやサーロインは柔らかいし、硬い肩肉やモモ肉もミンチにすれば、ハンバーグの材料にも使えるからだ。
また硬い赤身肉でも、加工すれば、美味しくもできたりする。
たとえばホテル内のレストランで、食品偽装を指摘されたステーキは、和牛ではなく、オーストラリア産の赤身肉に、国産和牛の脂を注入した「牛脂注入肉」だった。
牛脂注入肉というのは成型肉(加工肉)の一種で、サイコロステーキとして角切りで売られている肉だが、ステーキの形に成型されている肉もある。
それを表示せずに一枚肉として表示して、ホテルで高い値段をつけて売ったので問題になった。
因みに牛脂注入肉は、赤身肉に100本から300本くらいの注射針がついた「ミート・インジェクター」という機械でで、国産和牛の脂を入れた調味料を注入する。
これがインジェクション加工で、「人工霜降り肉」をつくる加工法だ。
インジェクション加工では、単なる硬い赤身肉が、霜降り肉のようになり、味も良くなる。
さらに重量が増えるので、スーパーやファミリーレストランでは、安いステーキ用の牛肉として重宝されている。