安かろう悪かろうを払拭した無印良品
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日本の大手スーパーチェーンが、プライベートブランドを始めたのは、1960年代から70年代だ。
さらに力を入れ始めたのは、1980年代かららしい。
たとえば売上高1兆円を達成した、最大手スーパーのダイエーは、乱立していたプライベートブランドを改め、「セービング」に統一して、プライベートブランドを確立しようとした。
それまで、ダイエーカラーのオレンジ色の安っぽいロゴとパッケージだった商品を、黒い四角形にSの文字をあしらった目に付く分かりやすいロゴに変更した。
一方、西武流通グループの西友ストアでは、「無印良品」というブランドを、統一プライベートブランドとして立ち上げた。
無印良品は、著名なデザイナーを起用し、赤紫色のロゴと、クリーム色という統一パッケージを用いて安っぽさを消した。
さらに「安くできる理由」を必ずパッケージの正面に書くというスタイルで、それまでプライベートブランドにあった「安かろう悪かろう」というイメージを払拭した。
それまでのプライベートブランドというと、材料の品質やランクを落として、低価格商品を作っているイメージだった。
が、無印良品の商品は、材料の質を落としているのではなく、選別を省いたり、ムダな塗装を省いたり、不必要な装飾や工程を省くことで、低価格を実現しているとアピールした。
さらに、無印良品は、西友ストアやFamilyMartなどの、西友系列店舗に並べるだけではなく、西武百貨店や阪神百貨店などに、独自コーナーを展開し始めた。
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「わけあって安い」。安かろう悪かろうの払拭
無印良品は、西友ストアのプライベートブランドとして誕生した。
当初からブランドコンセプトを定め、安かろう悪かろうではなく「わけあって安い」というフレーズで、過剰な装飾や選別などを省いて価格を下げていることをアピールした。
さらにプライベートブランドでありながら、著名なデザイナーを起用したり、商品展開を拡げて、東京の青山などに出店し始めた。
西武流通グループ(セゾングループ)には、こういった独自発展した企業がある。
たとえば同じく西友が立ち上げたコンビニのファミリーマートも、海外コンビニと提携せずに、独自でノウハウを開発して海外展開したり、情報システムも独自で構築したりしている。
無印良品も、西友の一部門であったが、独立して独自の道を歩み始めた。
ここまで来るともう、安売り商品のためだとか、競合他社スーパーとの差別化という枠を越えているね。
しかし無印良品は例外であって、大手スーパーやコンビニチェーンが、プライベートブランド商品の高品質化を図り始めたのは、21世紀に入ってからだった。
コンビニが全国に行き渡り、ショッピングセンターも地方にたくさんでき、過当競争が激化した。
社会の高齢化により、量より質が求められるようになった。
コンビニのローソンやファミリーマートが、商社の傘下に入り自社開発力を高めたことも、プライベートブランドの高品質化を後押しした。
いくら規模が大きいと言っても、スーパーやコンビニは内需産業であり、海外から農産物などを調達するためには、総合商社に手を借りねばならない。
つまり商社の傘下になったことで、他のコンビニチェーンに比べ、様々な優位性を持つに至ったわけだ。
一方、日本一のセブンイレブンは、セブンプレミアム仕様の特注品を、コンビニ店舗に優先的に置くようになった。
コンビニの店舗は狭いから、各メーカーも棚のスペースを獲得するため、最大手メーカーがセブンイレブンのプライベートブランドを作り始めたのだ。
プライベートブランドを嫌っていたはずの、最大手メーカーが、今は喜んでプライベート商品作りとは…隔世の感があるね。