日本酒の水増しの系譜
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スーパーに並んでいる商品と、百貨店に並んでいる商品は、品質がかなり異なる。
メーカー品の品質は同じでも、生鮮食品(肉・野菜・魚)は全然違う。
というのも百貨店の場合は、品質重視の傾向があるが、スーパーの場合は逆に、安さを重視するからだ。
なので安売り商品を見たら、どういう商品であるのか、お客さん自身がパッケージを確認して、買うかどうかを決めないといけない。
というのも日本の食品というのは、混ぜ物や水増し、農薬まみれが、ずっと当たり前になっているからだ。
こういう食品がまかり通る原因は、第二次世界大戦後の食糧難と日本の農業生産力不足にある。
戦中戦後の食糧難や、高度経済成長の人口増で食糧不足がずっと続いていたため、代用食品や増量技術が発達した。
一億人に食糧を供給するために、混ぜ物や水増しが認められ、品質よりも量を優先して大量生産することが求められたのだ。
たとえば日本酒は、戦時中からアルコール添加による増量が認められた。
清酒と言いながら、本物の清酒は半分で、廃糖蜜やサツマイモから作った醸造アルコールで水増しされていたのだ。
今でも、清酒の発酵を防ぐために、醸造アルコールを少し混ぜることはあるが、混ぜ物が半分というのは凄い。
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三倍増醸清酒(三増酒)と合成清酒
太平洋戦争中の品不足で、清酒に醸造用アルコールを大量に混ぜることが認められた。
醸造用アルコールというのは、廃糖蜜やサツマイモを原料として作った安いアルコールのことだ。
廃糖蜜とは、砂糖製造の過程で、大量に発生する甘い液体だが、雑味もヒドく結晶化しないので、加工用に回される成分だ。
廃糖蜜やサツマイモを発酵させ、それを蒸留して作ったのが醸造アルコールだ。
さらに戦後は、日本酒の原料となる酒米や、主食の白米も不足していたため、元の清酒の量の3倍まで、水増し(アルコール添加)が認められた。
これを三倍増醸清酒(三増酒)という。
三増酒は、清酒を3倍に薄めたモノなので、清酒独特の風味がほとんど無くなるため、水飴や酸味料などを添加して味を調えた。
それではさすがに清酒として売れないので、他の水増し清酒とブレンドした。
つまり戦後ずっと、清酒を2倍以上に薄めたモノが、清酒として売られ続けていたわけだ。
現在は2006年の酒税法改正によって、清酒成分が半分以上ないと、清酒として扱われなくなったが、戦後70年たっても、水増し清酒が清酒としてまかり通ってるのが現状だ。
水増し清酒の他にも、合成清酒というのがある。
合成酒というのは、簡単に言うと、醸造アルコールの原料に、アミノ酸を加えて発酵させたものだ。
合成清酒は、米を使わずに清酒の香りを生み出したもので、三増酒よりも歴史が古く、1922年に製造特許が降りている。
戦後の食糧難の時期に合成清酒は爆発的に売れたようだが、現在も料理酒の材料として生産されている。